【第128号】価値観を採用する

1. 入社前に決まっている

 「こんなはずじゃなかった」とは、入社したばかりの新入社員の言葉だけでなく、採用担当者も感じる部分ではないだろうか。書類、面接、試験などの関門を突破し、晴れて入社が決まった「選ばれた人」であるにもかかわらず、アンマッチを起こしてしまう。なぜなのだろうか。
 一番は採用担当者が採用希望者の「本当の姿」を見抜けないことにある。会社のことは説明会やネットで十分に調べてくるし、質疑応答のテクニックも書籍で学べる。どんなことが質問されるかも、ネットの掲示板で参考にすることができる。まるで「受験対策」である。こういうことは完璧に準備ができることなのである。誰を採用すればいいのか迷ってしまう理想の希望者ばかりが目の前に並んでいる錯覚を起こしてしまう。

2. 価値観に共感しても実行できない

 本当に重要なのは、「価値観」である。それも今現在ではない。過去のエピソードも面接時に質問するが、どんな“活躍”をしたのか、ではなく、どんな“価値観”で行動したのか、が重要となる。
 「御社の経営理念に共感したので入社をしたいと思います」は常套句である。話を聞くと、確かに自分たちの会社の強みやウリをよく理解している。ライバルと比較もしている。しかしこれだけは弱いのである。
 「素晴らしい考えですね」と他人の考えに共感することは多々ある。しかし、それをマネしようとはすぐには思わないし、マネしようとしてもできない、身につかない、ということは誰しも経験したことがあるはずである。
 つまり、価値観に共感したからといって、それを行動に移すか(移せるか)は別問題なのである。

3. 行動を変えられるか

 理想の社員は入社前の活動(クラブ活動、アルバイト、社会人経験など)が、どういう価値観、価値判断基準で行われていたのか、で判断すべきなのである。ここで、会社が掲げる「想い」だったり、「志」とマッチすることが重要なのである。これはブレない。
 それでは、マッチしていることを確認せずに採用してしまった社員の行動は変えられるのか。これは簡単ではない。だから多くの会社で苦労するのである。
 まずは、各社員が会社の本当の価値観をもう一度認識し直す。表面的ではなく、会社創設時から振り返る必要がある。そして、自分の価値判断基準を見つめなおす。どこがずれているのかを把握しないと直しようがない。そして、それに基づいて、何をすればいいのかを考えさせる。しっかりとしたフォローが必要となる。