【第127号】心の病と向き合う

1.“新型うつ”の発生

 ここ最近、「うつ」が話題にでることが多くなってきた。NHKなどの番組で頻繁に取り上げられていることや、この秋にも労働安全衛生法が改正され、メンタルヘルス対策が義務化される可能性があることも原因なのかもしれない。
 この新型うつと呼ばれるものは、会社には行けないが、プライベートでは、外出したり人と会うことができたりするもので、完全に家に引きこもるようなタイプのものではない。会社には来れないが、遊びには行けるとなると、これまでの常識では理解できない症状であるが、実際には、うつ病との診断が下る。
 これまでもパワハラなどで、部下がうつ病になった際、上司は「なぜだ?何がいけなかったんだ?」と、原因がわからないことが多かった。つまり原因となっているストレス源である上司に、その自覚がなかったのである。

2.企業としての対応は

 今、言われている「新型うつ」も、同様である。単なる怠け癖では、とも思われるからだ。しかし、親からも怒られず、挫折を知らずに社会に出てきた社員が、不適合を起こし、うつ病になるのも難しくはない。ましてや、コミュニケーション能力が低く、本音で話すことが苦手な社員は、抱えた問題や悩みを誰にも打ち明けられずにいることが多い。積もり積もったストレスが心を蝕んでいることに気づかず、頑張っているうちに、その緊張の糸が切れて、発症してしまう。
 いろいろな企業を見ていると、やはり上司の叱責の仕方が「人格否定型」「追い込み型」は、職場が殺伐として危険である。上司が常に眉間に皺を寄せて、部下を叱責している状態では、問題である。一生懸命、仕事をしているのはわかるが、常に機嫌が悪い状態では、部下もついていけない。

3.健全な社風をつくる

 上司が何でも部下の話を聞いてあげる風土をつくっていくことが重要である。これまでのうつ病よりも、最近の「新型うつ病」は、発症のハードルも低い。ちょっとしたことで、ストレスを感じてしまう。仕事の能力に関係なく、プライドが高いために、対応が難しい面もある。
 一番重要なのは、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が、部下に伝わるか、である。「新型うつ」のもうひとつの特徴として、他責型であるということである。「自分は悪くない。会社、上司が悪い」と感じている。「お前の仕事ぶりが悪いんだ」と言って諭したところで、理解されないのである。
 みんなで助け合う、みんなで話を聞いてあげる、という風土が必要である。親睦を深める機会や仕組みをうまく活用することがポイントとなる。