1. トラウマの払拭は大変
人間、過去に何度か辛い目に会うと、それがトラウマになってしまうことがある。子供のころ、繰り返し親に怒られたことや、教師に指摘されたことが、大人になって当然できるはずのものなのに、うまくできなかったり、行動に移すのに時間がかかったりする。それも本人が気づいていれば、修正することもできるが、気づいていない場合もある。そうなると、できない理由が「本人の自覚が足りない」「意識付けができていない」などになってしまう。
社会人になってからも同様である。上司に繰り返し怒られていると、それがトラウマになる。報連相が定着しない理由としてこれは少なくない。部下の話を聞いてみると、「耳に入れたいと思った報告も結局は怒られて終わる」「何を言っても文句を言われる」と感じているのである。
2. トップがつくる社風
中小企業は創業者や経営者が強烈なリーダーシップで会社を引っ張って大きくしていく。当然、部下の価値判断を揃えていく過程で、厳しく叱ることも多い。しかし、それは組織が大きくなり、カリスマ経営から組織経営に移行していくなかでは、通用しなくなる。創業者などは、「皮膚感覚」が発達しているので、悪い情報のキャッチが早い。しかし、世代が変わると、悪い情報がキャッチできなくなる。コミュニケーションパイプの重要性が高まるのだが、それが機能しない。
つまりトップが優秀だとその分、報連相が機能しない場合が多いのは、部下から言わなくても上司(社長)が必要なことを訊くし、ポイントを押さえられているから困らないのである。
報連相が活発に行われるか、そうでないかは、トップ(組織の長)次第なのである。
3. 根気強く取り組む
これまで上司(トップ)が部下に確認していた作業を「報連相」としてボトムアップに切り替えていくのは、簡単なことではない。待っていれば、業務に支障が出るし、トップが確認するスタイルを続けていれば、進歩がない。
報連相のポイントは「聴く姿勢」である。また人事制度においても、会議においても、部下の話に耳を傾けられるかが重要なのである。何故、それが必要なのか。3つの目的がある。ひとつには、情報の共有化を図るため。二つ目には、価値判断基準の一致を図っていくため。三つ目は、上司を責任から逃れさせないためである(聞いていない、知らない、関わっていない、などから)。そういったことを理解させた上で、徹底を図っていく。短期間では終わらないと思って、取り掛かる根気も必要な取り組みである。