1. ゆとりがなくなっている職場
最近、さまざまな企業の幹部の疲れた表情が目に付く。みなさん、重要なポジションについている方々だ。その企業のトップや役員の方々にお目にかかると、そんなに社員をこき使うようにも見えないのだが、現場に近い幹部の方々の話を聞くと、どうも様子が違う。「まだまだ」という言葉が聞かれる。
バブルの頃は確かに生産性の低い社員が組織にいた。しかし、それが組織の活性化を生んでいた。社員の多様性だったり、個性が際立っていた。潤滑油的な働きをしていた(彼らが“窓際族”であったとしても)。宴会時には率先して盛り上げ、組織になじめない社員の面倒を見ていた。
しかし、効率性が重視され、そういう社員は企業から淘汰されてしまった。組織の潤滑油を失い、人間関係がギスギスし出す。余裕人材がいなくなり、メリハリがつかない働き方になった。
2. 生産性が低下
結果として、一人一人の生産性は上がっているのに、組織としての生産性が上がらない。下がった企業も多い。日本型経営の良かった点は、年功序列型ではなく、組織内における役割の多様性と柔軟性だったのではないだろうか。仕事では成果を出せなかったベテラン社員もその経験から逆に悩める社員の相談相手にはなっていた。
日本人社会では、なかなか社員同士が良い意味でのライバル関係になりにくい。序列社会の中で、強者が弱者の健闘を称える風土がない(なくなってしまったのか)。小学校などの運動会で順位をつけなくなると更にひどくなってしまう。
人間関係を見ても生産的な人間関係を作れなくなってきている。お互いを思いやり、尊重し合い、助け合い、時には間違いを指摘し合う。そうではなく、愚痴をこぼしあい、上司や他人、会社を責め、自己責任を忘れている。
3. 笑顔を取り戻す
社員の個人目標を見ても、そこに「さあ、目標を達成するぞ」「お客様に喜んでもらうぞ」という思いが伝わってこない。研修をしていても日常業務に追われ、目が輝きを失っている。この状態では、社員個人の能力の限界が組織の限界となり、すぐに終わりが見えてしまう。
組織力が注目されているが、それは管理職のリーダーシップだけではない。組織をいかに作るか、風土をいかに作るかである。組織に笑顔がない企業は成長しない。自らが成長しようとしない。社員が笑って働ける環境整備が求められている。効率性だけでなく、人間が働くに相応しい企業にするための知恵が必要となっている。