【第107号】謙虚さと成長

1. どんなに優秀であっても

 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は筆者が好きな言葉であり、また常に心がけなければならない言葉だと思っている。
 しかし、現実には、そうでないケースが多い。特に中小企業など社員数が少ない職場においては、優秀な社員への業務の比重が過度に高まってしまい、依存度が高くなる。そうなるとどうしてもわがままや傲慢さが出るようになる。仕事を引っ張っていかざるを得ない中での必要悪でもあるのだが、これは最終的には本人のためにも会社のためにもならない。他の優秀な社員が入ってきたとき、あるいは成長してきたとき、必ず衝突するからだ。
 優秀な社員がお互いに謙虚であり、尊敬しあえる場合は、いいライバル関係となる。双方が成長するし、会社への貢献度も高まる。しかし、反発しあえば、協力体制は築けず、チーム力は半減する。優秀な社員であればあるほど、難しい問題である。

2. 感情に任せない

 そういう意味では、優秀な社員は、業務の専門性だけでなく、人間的にも“大人”にならなくてはいけない。多少、理不尽なことがあっても、思うようにいかないことがあっても、感情的に怒ったり、イライラ感を爆発させてはならない。
 特に上に立つ人間に、そういう面があると、職場の雰囲気は一気に悪くなる。部下が上司の顔色を伺って仕事をするようになるからだ。
 人間は感情の動物である。気分がいいときもあれば、悪いときもある。それは仕方のないことである。しかし、感情に任せてしまってはいけない。コントロールできるようになって初めて人間としての成長がある。自分の感情を優先してTPOをわきまえないようでは、どんなに仕事ができても幹部にはなれないし、なるべきではない。

3. 成長のために

 謙虚になることは難しい。仕事ができるようになれば、周囲は自分の言うことを聞いてくれるし、指示にも従ってくれる。結果も残せるから、自信もついてくる反面、天狗になりがちである。
 そうなると、誰も教えてくれなくなる。注意してくれなくなる。成長が止まってしまう原因となる。成長する人は、人からの注意を受け入れるし、自分の間違いも素直に認められる。本当に自信のある人は、間違いを受け入れることを躊躇しない。それが自分の成長につながり、更なる自信につながることをわかっているからだ。
 完璧な人間などいない。常に自分の行いを振り返り、反省し、次に生かすスタンスで仕事に向かっているかが重要となる。謙虚な姿勢、考えて欲しい。