【第87号】目的を見失ったサービス

1. 車内アナウンス

 世の中いろいろなサービスが存在するが、その中には「何のためにこのサービスをしているのか」が見えなくなっているものが幾つか存在する。
 ひとつには、電車の中でのアナウンスである。まず、声の大きさがまちまち。窓を開けていたり、冷房をかけているとほとんど聞こえないことがある。田舎の路線で初めて乗った電車だったりすると、かなり不安になる。ましてや夜だと田舎は明かりがない。駅名がわかりづらい。乗り越さないかヒヤヒヤしながら窓をのぞくことになる。
 また、最近は乗車マナーもアナウンスしている。しかし、聞くべき乗客(荷物をどかさない、足を投げ出している、携帯で話しをしている、など)は反応している様子がない。携帯音楽プレーヤーのイヤホンやヘッドホンで、外部からの音を遮断しているからである。
 何のためのアナウンスなのだろう。アナウンスすることが目的になっている。次の駅を伝える、乗車マナーを守らせる、ということを達成できていないことに気付いているのだろうか。

2. ポイントカード

 ポイントカードのないところを探すのが難しいぐらいに広く利用されているが、何のために配布しているのかがわからないところも多い。
 オープンの時は大々的に配布していたのに、それ以降は食事後の会計時にも配布する様子がない。無くなってしまったのかな、と思っていると担当者によって配布したりしなかったりしていることに気付く。
 利用方法や特典などのPRをまったくしないお店もある。形式的に配布しているのかな、と思ってしまう。
 お客様を囲い込む、自社のファンにする、という目的を忘れてしまっている。

3. 商品包装

 ムダが多いといわれる商品包装。これも何のためにという視点が忘れられている。単に簡略化すればよいのではない。どこまでムダでどこからが目的に合致しているのかが難しい分野であれば、これこそ利用者視点でなければならない。
 袋詰めがいい加減で持ちづらいケースもあるし、プレゼントラッピングで有料なのに、紙がゆるゆるになっている包装(贈る側の気持ちやもらう側の気持ちへの配慮がない)、もある。
 筆者は仕事柄書籍の購入量が多いため、原則ブックカバーは付けてもらわない。その確認は店員もするのだが、しおりが必要かどうかの確認はしてくれない。ほんの少し人手間かけてくれれば、と思うことが多い。
 目的は何か、を理解していないサービスは価値を生んでいないのである。