【第85号】なでしこジャパンの勝利

1. 団結力

 暗いニュースが多い中、なでしこジャパンの勝利は被災地の方々を含め、日本全体に力を与えてくれたように思う。
 その勝利の要因を監督は幾つか挙げていたが、そのひとつが「団結力」。チームで戦うスポーツの場合、チーム力は重要な要素である。個人の能力だけでは勝てない。
 組織のベクトルを一致させるのは、簡単なようでなかなかできない。企業の場合は、スポーツの「勝利のために」という単純な目標を持ちづらいからかもしれない。「利益のために」と言っても、個人単位、部門単位などの部分最適も発生するし、顧客の利益と会社の利益が一致しない場合もある。
 ここであきらめてしまうと、組織は団結しない。それでも、一致させる努力をする。利益の定義を再度行い、目標の串刺し(個人・部門・全社)を行う。

2. 強みを生かす

 体格面でのハンディは見た目にもすぐわかる。選手によっては20センチも身長差がある。しかし、それでも強みはある。戦略、戦術である。「戦略とは自分たちの強みをライバルの弱みにぶつけることである」。
 体力、正確なパスなどの自分たちの強みを生かすサッカーをする。これが徹底されていた。リーグ戦での1敗が、それを再認識させてくれたのも大きい。
 企業においても、自分たちの強みを見失っていることが多い。ライバルばかりを見ていて、ライバル対策に重点を置くばかりに、自分たちらしさを失ってしまう。いつの間にか、ライバルの土俵で相撲を取る羽目になっている。これでは自分たちの“良さ”を生かすことができない。

3. 粘り

 見ている側は、決勝戦を何度「もうここまでか」と思ったことだろう。企業における業績もそうである。目標達成まであと少しなのに満足してしまう。「ここまで頑張ったんだから」と自分に言い訳をする。
 スポーツの世界で優勝と準優勝に大きな違いがあるのと同じで、企業でも100%の達成率と99%の達成率は違う。
 失敗とはあきらめることである、と言われる。最後まであきらめないことが勝利につながる。日本に敗れたチームがあきらめていたわけではないだろう。しかし、あきらめていたら、日本にも勝機はなかった。つまり、あきらめなかったら目標達成の可能性は残るが、あきらめた瞬間にそれはなくなる、ということである。
 世界一はすばらしい。そこから学ばない手はない。しかし、別に奇策などない。当たり前のことにしっかりと取り組むことが重要なのである。