【第83号】自分たちの強みを生かす場所

1. 強みとは

 どうしてよいのかわからない、と嘆く場面が増えたのかもしれない。これは個人でも企業でも同じであろう。将来の見通しが立たない中で、これからどうするのかを決めていくのは、難しいことである。
 しかし、そういった中でも方向性は打ち出していかなくてはならない。その際に何度もコラムの中でも指摘させていただいているが、自分たちの「強み」をしっかりと把握する必要がある。ここでいう強みとは、「ライバルと差別化できる特徴」であったり、「お客様から強く支持されているもの」ということである。また「これは自信を持ってお客様に提案できる」というものも含まれる。他の会社には無い、あるいは自分たちが得意としている固有技術と言われるものである。
2. 個人の場合
 個人の場合は、企業よりも柔軟に考えられる。能力だけでなく、性格的なものも「強み」となるからである。ここで重要なのは、ただ単に「几帳面である」とか「積極的である」などという特徴を捉えるだけでなく、几帳面であることがどのような成果に結びついているのか、積極的であることがどのような結果を生んでいるのか、ということが説明できないといけない。自己満足では、強みとは言えない。
 資格保有も同じである。資格を持っていることは、差別化にはなるが、本当の強みではない。その資格を持っていることが、どういう結果を生んでいるのか、を具体的に説明できることがポイントとなる。
 どういう経験をしてきたかも重要である。どんな困難を乗り越えてきたのか、克服してきたのか、これらの点も必ず強みとなっているはずである。

3. 企業の場合

 企業の場合は、個人よりも難しい。優秀な社員がひとりいてもそれは強みにはならない。タナベ経営では、企業DNAというものを戦略に生かすように、と提言しているが、この企業固有のDNAが強みとして発揮されているかが重要となる。
 個人の強みの把握よりも難しい面がもうひとつある。自分たちが強みと思っていることと、お客様が評価していることが必ずしも一致しているとは限らないからである。
 まずは、自分たちの提供している商品・サービスの質の検証を行い、何が差別化の元になっているのか、そしてどこがお客様から評価いただいている部分なのかを把握する必要がある。当然、部門によって認識が異なる場合が多いので、全社でコンセンサスを取る必要がある。
 そしてこれらの強みを発揮できる場所を探すことが方向性を決める上で重要なのである。