【第71号】震災後の復興計画づくり

1.これまでにない広域で被害が出ていること

 震災後の復興の動きが急ピッチで進んでいる。この原稿を書いている状況で、すでにJRの在来線は復旧のメドが立ち始めている。高速道路も通行可能となった。
 企業も復興への活動を始めている。しかし、その計画立案は生易しくはない。阪神淡路の場合も中越の場合も甚大な被害を被った。それ以上に今回は被害が広域になっている。よって次の問題が発生している。
(1)東北を市場としている企業全体が大きなマーケットを失った状況である
(2)多くの工場が被災しており、部品・資材など川上における“目詰まり”が、産業全体に影響を与えている
(3)物流機能(多くの車輌・倉庫や道路などのインフラ)が広域にわたって被害を受けている
(4)人的被害(社員を失ったダメージ・経営幹部を失ったダメージ・雇用を維持できない事態など)
 これらへの対応は簡単ではない。

2.精神的ダメージをどう見るか

 多くの人が被災しており、その精神的ダメージも大きい。心理的なダメージ(PTSD)やストレスなどで消費するどころではない、という人もいる。とりあえずの費用負担も大きく、外食や娯楽に廻すお金も出てこないだろう。失意の中から、どう元気を取り戻すかも大きい。家族や同僚を震災で失った社員のケアも必要になる。
 「明るさ」「元気さ」を押し付けても拒絶される。しかし、暗いイメージを想像させるものも敬遠される。

3.2次被害の想定

 現状が回復されれば、次のことを考えていかなくてはいけない。
(1)当面の資金繰りはどうするのか(支払いと回収は今後どのようなスケジュールで正常化するのか)
(2)取引先との関係とはどうなるのか(続けられるのか、打ち切られるのか)
(3)社員の雇用・給与はどうすべきなのか(事業計画と必要人員数の見積もりとギャップの解消)
(4)復旧遅れによる失注や福島県などの今後の風評被害
 これら全てを検討しながら、復興プログラムを作っていかなくてはいけない。公的機関や我々のような外部の専門家の知恵を活用していく。復興を軌道に乗せていくには、スピーディに組織的に動いていくことがポイントとなる。こういう時はプロジェクトマネジメントのノウハウを持っている人材が必要である。
 東北全体が一体となって復興に進んでいって欲しい。