【第69号】企業の人材育成負担は増加する

1.学校での教育は機能しなくなっている

 ネットを活用した(活用したという表現はあまり正しくないかもしれないが)大学入試のカンニング事件が世間を賑わしたが、いろいろと考えさせられる問題でもある。
 ひとつには、記憶型教育だからこそ、起きる問題ということである。考えさせて答えがいくつもあるように問いの場合には発生しない。
 もうひとつは、情報にというものの価値観の変化である。わからないことは“ググれば”いい、ネットを通じて人に訊けばいい、という価値観の浸透である。
 ビジネスマンでネットを使って調べ物をしない人はいないはずである。それが社会人だけでなく、一般にも浸透してきているのである。学校の教育はそこに対応できていない。
 知識というものの価値が低下してきている一方で、思考によって生まれた知恵や工夫の価値が高まってきていることへの対応である。

2.何が不足しているのかを把握する

 これまで、新入社員セミナーでは、挨拶や名刺交換、電話の受け答えなど、社会人の基本常識を教えてきた。これからは、それだけでなく、思考能力や語彙(ボキャブラリー)が社会人として必要な量を確保できているのかも20代のうちに確認しておく必要がある。
 思考能力が欠如していると、自律・自立して仕事を進められない。考える力は、付加価値を生んでいく上で重要な能力である。これは、“頭が固くなる”前に鍛えておく必要がある。また、語彙を豊富にしておくことも重要である。これは、まず本を読むことである。流行の小説だけでなく、ビジネス書はもちろんのこと名作と呼ばれる文学作品や哲学・思想など、普段聞きなれないような言葉で書かれている本を読むことが大切である。
 語彙が乏しいと、自分の言いたいことがうまく言えない、言いたいことが伝わらない、報告が結論から言えない、などの弊害が出てくる。

3.キャリアパスと人材育成

 本来は、学校や家庭で教育すべき基本的なマナーや常識も、企業がフォローして教えていかなくてはいけないのが実情となっている。基本素養が不足しているのだから、これは早めに手を打つ必要がある。「そのうち身に付くだろう」「いずれマスターするだろう」なんて言っている間に、基礎の無い土台の上にスキルを積み上げようとするから、いずれ身に付かなくなる。
 しっかりといつまでの何を習得してもらうのか、そして、それらを修了しないと昇進も昇給もないという形を早く確立することがポイントである。
 それが人材育成をしていく上での、モチベーションにもなる。