【第68号】ビジネスリテラシーの低下

1.社会人の「読み書きソロバン」のレベル低下

 ここ数年、様々な企業で教育研修をするたびに感じるのが、研修参加者のビジネスマンとしての基本知識や能力が低下してきていることである。これは階層を問わない。ベテランだろうが若手だろうが全てで起っている。
 まず読解力が低下している。課題図書を指定して感想文を書かせても、表面的なことしか理解できない。“行間”に書かれていることがわからない。登場人物の深層心理まで思いをはせる事ができない。また、それ以前に漢字の読み書きができない。書き、はともかくも読み、もいいできではない。
 自分の意見を文書にまとめることも苦手である。特に、“本質”について端的にまとめることができない。ボキャブラリー(語彙)が不足していて、相応しい表現にならないのである。
 数値分析などになるとなお更、できる人が限られてしまう。

2.組織の思考停止

 こういった基本的な能力であるリテラシーの部分が衰えてくると、仕事が指示待ちになってくる。読み取ったり、まとめたりできないのであるから、どうしたらいいのかの提案も上司やお客さまにできなくなってしまう。
 これが蔓延してくると、組織としての思考停止状態になる。みんなが考えない。上司におんぶに抱っこの状況である。意思決定が遅れる、仕事ができる人に過度に集中する、ヒマな人の能力向上が見られなくなる、といった弊害が発生し始める。
 当然、組織としてのパフォーマンスは低下して、目標達成もままならなくなるし、モチベーションも低下してくる。 
 組織の思考力は、組織の活性化にも影響してくる。思考力が高い組織は活性化している確立が高い。逆に、思考力が低下している組織は不活性化している。

3.できれば30歳になる前に

 ビジネスリテラシーの教育は30歳までの方がやりやすい。考えもまだ固まっていないので、柔軟に意思が変えらたり、これまでやってきたことにムリに執着することがない。また、知的好奇心を持つようになるのも時間がかからない。
 読書の習慣も若いうちにつける。40歳・50歳になって、日常の業務の責任が重くなり、やるべきことが多くなってきてからでは、時間も取れなくなってしまう。
 様々な面での吸収力も違うし、理解のスピードも違う。
 そして、これらの勉強は継続性が大事である。今、低下していても2年間継続して取り組めば、コミュニケーション力が見違えるように上がってくる。