【第63号】プロ意識と志

1.言行一致の見られない若手経営者

 先日、若手経営者が参加するセミナーに私も参加する機会があった。講師の海外視察の話しもあり、大変ためになるセミナーであった。
 セミナー後には懇親会が開かれ、講師と知り合いだったこともあり、同席することとなった。ほとんどの方が懇親会にも参加し、会は盛況であった。が、そこでガッカリすることもあった。
 30代前半の若手経営者が、自慢げに話している内容に耳を疑った。本業とは別にやっている副業の話であったが、それが今社会問題となりつつあるビジネスだったのである(ここではその方への配慮から詳細は記載しないが)。彼はその数秒前に自分のビジネスのポリシーとして「人の喜ぶ顔が見たい」と言っていた。しかし、その副業は結果として人を苦しめ、悲しませることになるビジネスである。以降、その方がどんなに素晴らしいことを言っても真実味を感じなくなった。

2.プロ意識とは

 資格社会の一方で、国家資格が劣化している。前述の経営者も立派な国家資格を持っている。しかし、その国家資格とは別に「お金を儲けるために」違うビジネスを行っているのである。お金を儲けることは否定しない。資本主義の世界で生きるためには必要なことである。しかし、その資格を保有している社会人として、恥ずかしいビジネスモデルをそのために展開するのは、プロとして如何なものか。
 ○○大学卒という肩書きと同レベルでの資格になってしまっていないか。消費者やサービスの提供を受ける側は、ひとつの判断材料として、その「肩書き」を見る(良い悪いかは別として)。この状況では、それを3.3偽っている「詐欺」に近い行為である。
 前述の方は、さらに違うビジネスを始めると話していた。ご自身の名刺は「忘れた」ということで、他の方の名刺を集めていたが、それまでの話しから“本当に”名刺を忘れたのかすら信じられなくなっていた。

3.(消費者の)最後の審判はある

 ネットの世界においても、現実の世界においても人をだます商売というものは、無くならない(その意思がなくても、結果として騙す結果になるものを含めれば限りがない)。
 しかし、最後に判断するのは消費者である。そういう商売はいずれ破綻する。「誠意」「誠実」がない関係は長続きしないからである。目に見えない価値とは、誠意や誠実に基づいた「信頼」だからである。ブランドの基本的な価値もここにある。
 創業の原点に返り、何のためにこの商売(事業)をやっているのか、再度考えることが重要なのもこの価値を見極めるためだからである。