1.話の「切り出し」
上司と部下の“距離のとり方”に悩まれている方々が多い。定期採用がなくなり、年齢の階段がまばらになったために、上司と部下の年齢格差が大きくなっている。「先輩」=「上司」のケースが増えてしまった。仕事の相談や悩み事を気楽に話しかけられる立場の社員がいなくなったとも言える(中には気さくに話しかけられる上司もいるのだが)。
そういった場合、話の切り出しも部下からは難しい。「何でも気兼ねなく相談してくれ」と上司が言ったところで、部下からすれば「何を言われるかわからない」のである。先輩という人事考課や人事異動に絡まない立場の社員から「仕事に対する考え方が甘い」と言われるのと、そうではない上司から言われるのでは、その重みが違う。まずは上司から「どうだ?」と声をかけることから始めるべきである。
2.部下の意思を受け止める
コミュニケーションには「自分の意思を伝える」という大きな目的があるが、これは「双方向」の目的である。つまり、上司が自分の意思を伝えることだけでなく、部下も自分の意思を伝えることが目的としてあるのである。しかし、多くの場合、上司の意思を“指示・命令”として伝えることが主となり、部下の場合は、「はい、了解しました」という意思表示のみに終わりがちである。これでは「双方向」ではない。
どうすれば部下の意思が上司に伝わるか。これは上司の「ヒアリング能力」を向上させていくことが重要となる。よく言われる「聞く力」である。じっくりと部下の相談ごとに耳を傾ける。「能力」と言っても、まずこの姿勢が大事なのである。「部下の気持ちはどうなのか」「何を伝えようとしているのか」を把握できるかがポイントとなる。
3.コミュニケーションの効果
上司と部下のコミュニケーションが充実してくると、組織内の仕事の密度が濃くなってくる。処理スピードも上がってくる。これは組織の関わる業務全てが動き出すからである。コミュニケーション不全になっている組織はあちらこちらで業務が滞っている。「締め切り」というアラームがあちらこちらでなっている状態で、能率も低下してしまう。
業務の滞りが無くなると、社員は前向きに、積極的に行動するようになる。先手先手で仕事ができるようになり、仕事を進めていくのが楽しくなるからである。
マネジメントをしていく上で、人間関係は重要なファクターであり、また困難な課題でもある。上司が一歩前に踏み出すことからしか始まらない。