【第1号】現場力の衰退は企業存亡の危機に直結する

1.マニュアル人間・指示待ち人間の増殖

 コンサルティングの現場で最近痛感することが、現場力が低下してきていることである。それはマニュアル人間や指示待ち人間が増加していることに原因がある。マニュアルにないことが発生すると対応ができない、マニュアル通りにしか対応ができないという「マニュアル人間」が増加すると、現在のように価値観が多様化し、顧客ニーズが多岐にわたってくると現場で対応できないことが増えてくる。同じように指示がないと仕事ができない「指示待ち人間」が増えてくると現場が周囲の環境変化のスピードについていけない。お客様の期待値以上の商品・サービスを提供する力つまり付加価値力が弱まり、顧客満足度が低下していってしまう。

2.考える力の衰退

 これらの現象の理由は、社員の「考える力」が衰退してきているためである。すぐに答えを求めてしまう。上司にすぐに答えを求めてしまう部下、お客様に答えを求めてしまう御用聞き営業など各企業の現場で多数目撃する。私たちのような外部の人間にでさえ、どうしたらよいのか、すぐに答えを求めてくる。尋ねられたら答えるのが我々の仕事でもあるが、容易に答えを求めてくる姿勢に疑問を感じるケースも多い。自分たちのことなのに、自分たちで考えようとしない。すぐにギブアップしてしまう。こうなるとマニュアルがあってもマニュアル通りにできない、指示があっても指示通りにできない、という社員がでてきてしまう。「なぜこういうルールになっているのか」「何の目的があるのか」という点を考えられないからである。最後にはミス・クレームの発生が防げなくなり、顧客の信頼を失う結果となってしまう。

3.真剣討議の場を増やす

 そういう企業の共通点は真剣討議の場がないことである。会議と名のつくものであっても、報告会になっていることが多い。貴重な時間を使って経営幹部が集合しているのに、結果報告に終わっていては生産性はあがらない。これからどうしていくべきなのか、この厳しい環境下において企業が真剣に考えるべき事項は多いはず。真剣討議は相手を傷つけてしまうこともあるが、それを恐れていては業績向上はありえない。社内でもっと議論する場を設け、考える力を養っていくことが現場力を向上させるために必要なのである。「思考停止」状態からの脱却が業績低迷からの脱却の第一歩でもある。危機的状況に陥る前に手を打つことが重要である。