【第349号】現場に徹底されていること

1.工場現場で

 前回のコラムでは、現場がいかに見えないか、について触れた。今回は、その現場にどんなことが徹底されていくべきなのかについて指摘していきたい。今回、工場見学してきたのは、ある食品メーカーで従業員100名ぐらいの会社。創業90年以上の歴史を誇る老舗企業である。そこで徹底されていたのは、もちろん安全・安心につながる衛生面であることはもちろんだが、本当にこだわった「手造り」の部分。この機械化時代に、どうして?と思うほどに、手造りにこだわる。そして、品質へのプライド。そこまで原価をあげなくても、と心配になってしまう。材料の質をあげる、手間をかける、それは本当に消費者により良いものを届けたい社員全員の想いのように感じた。

2.伝えていくことの難しさ

 経営者(創業者)の想いは、どのようにして、社員に徹底されるようになったのだろうか。この会社は近年、業績を伸ばし、工場も新設することができた。当然、工場の中は、近代化を図ったり、規模を大きくすることができた。そうすることで、利益率もあがり、社員の労働環境も改善される。しかし、そうはしなかった。工場は近代的だが、手造りの部分は残したのである。そして、その手造りの部分を支える面においては、近代化を図った。製造する商品が季節商品のため、繁忙期には、本当に忙しい仕事になる。一部のコアな業務を受け持つ社員は、家に帰れないこともある。しかし、彼らは会社の「こだわり」を理解し、プライドを持って仕事をしている。それは、自分たちのその「こだわり」を私たちのような消費者にアピールするようになって高まっていったのだ。

3.知っていることの嬉しさ

 歴史がある分、知名度があり、商品ブランド力がある。それに甘えて、業績を悪化させた企業は数しれない。潰れた会社ももちろん多い。それは、社員がなぜ会社がそこにこだわるのかを理解していないためである。今回、私たちが工場を見学されてもらい、その意味を理解させてもらった。消費者である私たちが知るのと同時に、社員の方々も一緒に共有できる。「そんな想いがあったのか」ということを知るのは消費者として嬉しい。消費者が感激している姿を社員が見て、自分たちがやっていることの正しさを知る。この循環は素晴らしいこである。説明している社員、案内してくれる社員の自信に満ちた眼差しが印象的であった。働いている社員はその目の輝きを見ているに違いない。